意匠のよくあるご質問

お客様よりよくいただくご質問を掲載しています。ここにないご質問に関しましてはお問い合わせフォームよりお問い合わせくださいませ。

Q.
意匠権が成立するための要件について説明して下さい。
Q.
意匠出願には、特殊な意匠の制度があると聞いていますが、その制度について説明して下さい。
Q.
自分で工夫したスプーンを販売していますが売れ行きが好調なので、権利化したいと思います。特許・実用新案・意匠、どれで出願したらよいですか?
Q.
自社商品のパッケージをデザインしました。パッケージにはロゴ化した社名を付けています。パッケージのデザイン、ロゴ化した社名ともに保護を受けるには?
Q.
自社のマスコットキャラクターが決定し、このキャラクターをコップ・歯ブラシに模様としたものを販売予定です。マスコットキャラクターについてどのように保護を受ければよいでしょうか。
Q.
自社の人気のあるお菓子を詰め合わせ商品として販売開始したところ、大変好評です。各お菓子を見栄えが良いようにうまく詰め合わせて箱に入れていますが、これを意匠登録できますか?
Q.
掃除機をデザインしました。部分的に特に独創的なデザインがあります。これを保護するもっとも有効な手段は?
Q.
自分で描いたイラストをコップに表して意匠出願をしたいと思いますが、このイラストはブログにアップしており、ネット上で話題になっています。登録を受けることはできますか。
Q.
意匠権の存続期間は?

Q.意匠権が成立するための要件について説明して下さい。
A.

意匠法の目的
意匠法は、「意匠の保護および利用を図ることによって、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に役立たせること」を目的とする法律です。
意匠法は、特許法などと同様に、産業上の知的創作物の保護を目的とする制度です。しかし、特許法が、技術的なアイデアを保護する制度であるのに対して、美感を起こさせる商品デザインを保護する制度である点で、異なっています。

意匠法の保護対象
意匠とは、「物品(物品の部分を含む)の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」をいいます。
ここで「物品」とは有体物である動産を指すので、不動産は含まれません。定形性がない、液体、粉状物、粉状物なども含まれません。
「形状」とは物品の形をいい、「模様」とは形状の表面に表わされる線図、色分け、ぼかしをいい、「色彩」とは第一色からなる着色をいいます。これらは定形性を要求されますが、例外的に、カサや多機能ナイフのように、物品の機能に基づいて規則的に変化する、いわゆる動的意匠も、保護の対象に含まれます。
「視覚を通じて美感を起こさせる」とは、肉眼で快く知覚できることをいいます。したがって、機能的効果のみを目的とした物品の形態は意匠に含まれません。
もっとも、必ずしも高尚優美でなくてもよく、実務上は、視覚を通じて構成が全体的なまとまりとして把握できるものであればよいとして、比較的緩やかに解されています。

意匠の登録要件
意匠が登録を受けるためには、つぎの各要件を満たす必要があります。

  1. 工業上の利用可能性
    工業的な生産方法により量産できることをいいます。特許要件である「産業上の利用可能性」と同じく、理論上、実験上のものにすぎず「利用可能性」がないものは除かれます。ですが特許法と異なり、「工業上」のものに限定されます。
  2. 新規性
    つぎの3つの場合は、新規性がないとして、原則として意匠登録されません。
    意匠登録出願前に国内または外国で、

    • A.公然と知られた意匠と同一の意匠
    • B.頒布された刊行物に記載されたり、インターネットで公表された意匠と同一の意匠
    • C.上記、A,Bに類似する意匠

    しかし、意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して、またはこの者の行為に起因して、A、Bに該当するに至った意匠は、6カ月以内に出願した意匠について新規性や創作性を判断するにあたっては、A、Bに該当しなかったものとみなし、救済を図っています。

  3. 創作性
    意匠登録出願前に、その意匠の分野の平均的なデザイナーが、国内外で周知のモチーフに基づいて、容易に創作できた意匠は、登録が認められません。
  4. 先願
    先願の意匠と同一・類似の意匠を後日に出願しても、登録は認められません。
  5. 不登録事由
    公序良俗を害するおそれのある意匠、他人の業務にかかる物品と混同を生ずるおそれがある意匠、そして物品の機能にとって不可欠な形状のみからなる意匠は、登録を受けることができません。
Q.意匠出願には、特殊な意匠の制度があると聞いていますが、その制度について説明して下さい。
A.

部分意匠
従来、意匠権は、物品の全体についてだけ認められ、部分については認められていませんでした。そのため独創的で特徴のある部分であったとしても、効果的に保護できませんでした。そこで、1998年の法改正で、部分意匠としてその意匠権の成立を認め、保護する制度を設けました。
部分意匠の意匠権の効力は、その部分意匠と同一・類似の意匠を含む全体意匠におよびます。

組物の意匠
組物の意匠制度とは、同時に使用される2以上の物品であって経済産業省令で定められる物品に関する意匠で、組物全体として統一があるものを、1つの出願で取得できる制度をいいます。
従来、この制度では、たとえばコーヒーセットのように、統一的なデザインの複数の物品で1組で販売されるものを、13種類の物品に限定して保護していました。しかし、シリーズ物の文具のように、統一的なデザイン でも、別々に販売されるものは保護されませんでした。
そこで、1998年の法改正により組物の要件を緩和し、また、保護対象の物品を56種類に拡大して、システムデザインの有効な保護を図ろうとしました。
なお、組物の意匠権は組物全体に対する1つの権利ですので、組物の一部の意匠を侵害する行為には効力がおよびません。

関連意匠
デザイン創作の実務上、1つのデザイン・コンセプトから多数のバリエーションのデザインが生まれることがあります。このような実務に応えるものとして、従来、意匠法では、自己の登録意匠にのみ、類似する意匠の登録を認めることにより、本意匠の類似範囲を明確にし、あわせて保護を強化する類似意匠制度を採用していました。
しかし、裁判例の多くが、類似意匠に独自の意匠権としての効力範囲を認めず、単に類似範囲を確認するものにすぎないという見解を採用していたことから、類似意匠登録の実益はわずかでした。
また、本意匠の出願後に類似意匠の出願を行なえたため、意匠をめぐる権利関係が不安定になるという弊害もありました。
そこで、1998年の法改正で、類似意匠制度に代えて、関連意匠制度が設けられました。
関連意匠制度は、類似意匠制度と同じく、登録意匠と類似する意匠について同一人に登録を認める制度ですが、類似意匠制度とは異なり、本意匠と同日に出願された意匠についてのみ認められ、また、通常の意匠権と同一の効力範囲が独自に認められます。なお、2006年6月の改正により本意匠が意匠公報に掲載されるまで出願することが認められるようになりました。

秘密意匠
意匠は登録後に意匠公報に掲載されて第三者に公表されます。ですから、登録よりも販売時期が遅れる場合などには、意匠が模倣されて,出願人が不利益をこうむるおそれがあります。
そこで意匠法は秘密意匠制度を設け、意匠登録から3年以内に限り、登録意匠を秘密にすることを認めています。
もっとも、秘密意匠登録をすると権利の内容が公表されないため、第三者が不利益をこうむらないようにしなければなりません。そこで、秘密意匠の内容を明らかにした書面で、特許庁長官の証明を受けた警告書を提示しなければ、差止請求権を行使できないことになっています。
損害賠償請求についても、通常の意匠権と異なり、侵害者の過失を推定する規定が適用されません。

Q.自分で工夫したスプーンを販売していますが売れ行きが好調なので、権利化したいと思います。特許・実用新案・意匠、どれで出願したらよいですか?
A.

すでに販売しているものは、特許出願しても権利を得ることはできません。実用新案は無審査なので権利を得ることはできますが、有効に使えない権利です。

一方、意匠では、販売開始日から6ヶ月以内に出願し、証明書面提出等の一定の手続を行えば、自分の販売行為によっては新規性が否定されないという制度(「新規性喪失の例外」といいます)を活用することができます。
但し、販売開始日から6ヶ月以内であっても、できるだけ早く意匠出願することをお勧めします。この制度を利用できるのは、自ら公知にした意匠の意匠登録出願のみ、つまり、自分の出願より前に他人が公知にした意匠があれば、その意匠によって新規性(及び創作非容易性)がないと判断される可能性があるからです。

Q.自社商品のパッケージをデザインしました。パッケージにはロゴ化した社名を付けています。パッケージのデザイン、ロゴ化した社名ともに保護を受けるには?
A.

商標としての出願と、意匠としての出願を検討すべきです。
商標登録では、社名ロゴに独占権が発生します。パッケージ全体の外観が自社のものと異なっていても社名ロゴが同一・類似である場合には権利行使が可能ですが、逆に、パッケージ全体の外観は酷使しているのに社名ロゴが異なる場合には権利行使ができません。権利は10年ごとの更新登録を行うことにより半永久的に存続させることが可能です。
意匠登録では、パッケージデザインに独占権が発生します。パッケージ全体の外観が酷使していれば社名ロゴが異なる場合にも権利行使が可能ですが、パッケージ全体の外観が自社のものと異なる場合には社名ロゴが同一・類似であっても権利行使ができません。保護期間は登録日から20年です。

Q.自社のマスコットキャラクターが決定し、このキャラクターをコップ・歯ブラシに模様としたものを販売予定です。マスコットキャラクターについてどのように保護を受ければよいでしょうか。
A.

物品を「コップ」「歯ブラシ」として、意匠登録出願をすることができます。
但し、その権利範囲は、登録を受けたマスコットキャラクターの図柄と同一・類似する図柄に限ります。たとえば、マスコットキャラクターの表情やポーズが大きく異なる場合には、意匠権の効力が及ばず、差し止め請求や損害賠償請求等ができない可能性もあります。
また、著作権での保護も考えられます。上記のように、他人が表情やポーズが大きく異なるマスコットキャラクターを意匠登録を受けた物品以外に使用していれば、著作権によって差し止め請求や損害賠償請求等ができる可能性があります。
さらに、マスコットキャラクターですから、自社の商品やサービスであることを表すものとして、社名ロゴの代わりに使用することがあると思いますが、その場合は、商標登録を受けることも考えられます。

Q.自社の人気のあるお菓子を詰め合わせ商品として販売開始したところ、大変好評です。各お菓子を見栄えが良いようにうまく詰め合わせて箱に入れていますが、これを意匠登録できますか??
A.

お菓子の詰め合わせ方に特徴があっても、それについては意匠登録を受けることはできません。意匠登録を受けられるのは、「物品」自体(包装容器、お菓子)のデザインです。お菓子の詰め合わせ方はその物品の本来の形態でなく、意匠法上で「意匠」とは認められないからです。(物品の詰め合わせ,展示などにより見栄えよく配置を工夫した形態は、「サービス意匠」と呼ばれます。)

なお、意匠登録はできないものの、不正競争防止法による保護を受けられる可能性はあります(タオルセット事件)。保護を受けるには、自社商品の販売開始日から3年以内であること・相手の模倣の事実と模倣の意図を立証することが必要です。

Q.掃除機をデザインしました。部分的に特に独創的なデザインがあります。これを保護するもっとも有効な手段は?
A.

部分意匠制度の活用が考えられます。
「掃除機」全体としての意匠権を取得しても、特に独創的なデザインのみが模倣された場合、意匠全体としての模倣が回避されていれば意匠権の効力は及ばない事態に陥ることがあります。そこで、平成10年の法改正以降、物品の部分に係る形状等について独創性が高く特徴ある創作をした場合は、当該創作を部分意匠として保護することとしました。(※)
製品全体のデザインにも特徴があれば、全体意匠の出願も併せて行うことができます。ただし、全体意匠の意匠公報が発行されてからでは部分意匠の出願はできないなど、制約がありますので注意が必要です。
(※意匠法第2条の意匠を構成する「物品」の定義に「物品の部分」が含まれることを明らかにしました)

部分意匠のバリエーションや、全体意匠のバリエーションがあれば、それぞれ部分意匠の関連意匠、全体意匠の関連意匠として出願することができます。バリエーションの意匠(関連意匠)は基本型(本意匠)の意匠公報の発行よりも前に出願する必要があります(意匠法10条)。

Q.自分で描いたイラストをコップに表して意匠出願をしたいと思いますが、このイラストはブログにアップしており、ネット上で話題になっています。登録を受けることはできますか。
A.

ブログにアップして6ヶ月が経過していなければ、登録を受ける可能性があります。イラストは、ブログにアップした時点で公知になった(新規性喪失)と考えられます。本来なら、既に世の中に公表されたイラストをただのコップに表しても、「複数の公知の意匠を当業者にとってありふれた手法で寄せ集めたにすぎないもの(寄せ集めの意匠)」に該当し、公知のデザインから容易に創作できたと判断されて登録を受けることはできません。

しかしながら、以下の手続きで「新規性喪失の例外」の適用を受ければ、新規性は喪失していない、として審査されます。

  1. 公表した日から6ヶ月以内に出願
  2. 新規性喪失の例外の適用を受ける旨を記載した書面を添付
  3. 自分で描いたイラストであること及び自分で公表したことを証明する書面を出願日から30日以内に提出

ただし、同じような他人のデザインが公知になった場合は、そのデザインによって拒絶される可能性があります。したがって、できるだけ早目に出願されることをお勧めします。

Q.意匠権の存続期間は?
A.

意匠権の場合は登録日から20年です。H18改正法により、ロングライフ製品をさらに有効に保護するために、15年から20年に延長されました。(平成19年3月31日以前の意匠登録出願については、設定の登録の日から15年です。)

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