【知財情報】マドプロ出願 (2)留意点
費用面、手続き面、審査期間の面で、メリットがあるマドプロ出願ですが、下記の点には留意が必要です。
マドプロ出願の留意事項
費用が想定より高くなる可能性がある:
マドプロ出願では、通常出願(パリルート出願)に比べ費用が安いことに注目が集まりがちです。しかし、マドプロ出願であっても、現地特許庁から拒絶理由通知が発行された場合、通常出願と同様に、意見書の提出は現地の弁理士等に依頼する必要があります。このため、現地の弁理士等に意見書提出に係る手数料を支払う必要があります。この点は、認識しておいたほうがよいでしょう。
以下、詳しく説明いたします。
マドプロ出願では、出願時に「A国でABCという商標を権利化したい」など、権利化したい国を指定します。そうすると、出願後、書誌的な事項がスイスのジュネーブにある国際事務局でチェックされた後、国際事務局からA国の特許庁へ、指定がされた旨が通知されます。これを受け、A国では、その商標ABCが自国で登録できるかの審査が開始されます。
そして、A国が「ABCは登録できない」と考えた場合、国際事務局から出願人へ「拒絶理由通知(暫定的拒絶通報)」が届きます。
出願人は、拒絶理由通内に対し、「登録できるはずだ」と反論することができます。ただし、その様な反論を行う場合、出願人は、A国の弁理士等を介して、A国の特許庁に意見書(反論の理由を記した書類)を提出する必要があります。
したがって、拒絶理由通知が発行された場合、マドプロ出願でも、通常の出願と同様に、出願人は、弁理士等に意見書を提出するための手数料を支払うこととなります。
基礎出願・基礎登録との同一性:
マドプロ出願では、出願する商標は、日本で出願あるいは登録した商標と「同一の商標」であることが求められます。
このことが起因し、既に日本で商標権を有しているのにもかかわらず、別途、マドプロ出願用に日本で同じような商標を出願する必要が生じることがあります。
「ABC/エービーシー」という商標権をすでに所有しているケースを考えます。この場合、海外で「ABC/エービーシー」を使用する場合はよいのですが、海外で使用するのが「ABC」であるという場合、別途、マドプロ出願用に日本で「ABC」を出願する必要があります。
そうすると、マドプロ出願用の費用以外に、日本出願用の費用も別途発生することとなります。
もし、今後、日本で商標出願する、という場合、海外進出の可能性も考慮し、日本でも海外でも使える商標を出願しておく、ということは有効でしょう。
セントラルアタック
マドプロ出願が国際登録されてから5年以内に基礎出願・基礎登録となる日本出願・登録が拒絶や無効になった場合、マドプロ出願が無効になってしまいます。このため、できれば、日本で商標登録が完了してからマドプロを行うのが好ましいです。
一方、もしこれから日本で商標出願される場合、出願にかかる商標をすでに使用している・あるいは使用準備を相当進めているのであれば、日本の商標出願について早期審査を請求することができますので、ご検討ください。