【コラム】キャッチフレーズ等の商標出願
- ありふれたキャッチフレーズ(宣伝広告)、スローガン(企業理念・経営方針等)は登録されない
審査基準においては、「キャッチフレーズ、スローガンとしてのみ認識させる場合は本号(※商標法第3条1項6号)に該当する(※登録できない)と判断する」と規定されています。
登録できないキャッチフレーズ、スローガンの例として、「一般的に使用される語句で記述していること」等が規定されています。
簡単に言うと、聞いたことのあるようなありふれた表現のキャッチフレーズ、スローガンは登録できない、ということです。
- ユニークならば登録できる
しかし、必ず登録できないわけではありません。
審査基準においては「キャッチフレーズ、スローガンのみならず、造語等としても認識できる場合は本号に該当しない(※登録できる)と判断する」としています。
冒頭のように、キャッチフレーズ、スローガンとして「のみ」認識させる場合は登録できないが、キャッチフレーズ、スローガンであっても、「造語等」としても認識できる場合は登録できる、という点がポイントです。
これは、キャッチフレーズ、スローガンであっても、ユニークであれば登録できる、という意味です。キャッチフレーズ、スローガンだ、と認識させる表現であっても、なおも同時に商標としての役割を果たす場合があるためです。
- 特許庁の判断事例
特許庁は、キャッチフレーズ、スローガンが「一般的に使用される語句で記述している」ような、ありふれた表現かどうかを判断するにあたり、
・文言上の意味から、商品の品質等、企業の特性を表すものか
・インターネット等で第三者が使用するものか
を検討します。
一例をあげますと、下記の、「菌からあなたを守りたい」「世界の命を、技術で守りたい。」という2つの商標は、やや似通った構成ですが、「菌からあなたを守りたい」は登録され、「世界の命を、技術で守りたい。」は拒絶されました。
拒絶2016-017033 「菌からあなたを守りたい」
・「(細菌などの)菌からあなたを守りたい」程の意味合い」であるが、どのような商品であるかなど具体的に表すものではない
・「本願の指定商品の分野において、「菌からあなたを守りたい」の文字が、商品の説明や、原審説示のように顧客の吸引、販売促進等のためのキャッチフレーズとして一般的に使用されている事実は発見できなかった」
として、登録が認められました。
拒絶2017-007863「世界の命を、技術で守りたい。」
・「構成文字の語義に相応して,「技術をもって,世界にある命を守る」という程度の願望を表した記述的な文章であると容易に理解できる
・「私たちフジワラ産業株式会社は/誰もが水と緑あふれる豊かな大地で,/大切な人と安心して暮らせるように/この世界のあらゆる命を守る活動を行います。」「ひとの命を守る。ひとの暮らしを守る。ひとを育む環境を守る。わたしたちは,世界中の人々がいつまでも安心して快適に暮らすことのできる社会づくりに貢献していきます。」等の使用される例がある
として、登録が認められませんでした。
- 実務上の指針
・キャッチフレーズ、スローガンも商標登録は可能な場合がある。
・ユニークであれば、登録されやすい(他社があまり使わない表現を入れる。例えば社名や自社製品名が含まれればユニークとされやすい。)